鳥のコンプリケーション二種

日本滞在は一日ですぐに飛び立ってしまうと言う、とても貴重な鳥のコンプリケーションを、立て続けに2つ拝見させていただける機会に恵まれました。
仕事がアレゲでも駆けつけていたので、記録を残そうと。

Jaquet Droz Charming Bird

2013年に発表され、今年のバーゼルでいよいよ発売になりました。
見たい見たいとずっと言っていたら、ワールドツアーのお披露目イベントに呼んでいただけました。

iPhoneのカメラで撮っていいのか…とか思ったのですが、動画まで取ってきました。

小型版のふいごとホイッスルが内蔵されており、さえずりながら鳥が動きます。
鳥の羽と尻尾、くちばしが動いていて、ベース部分のピニオンによって回転しているようです。
さえずりがイマイチ録音できていませんが、結構大きい音量が出ていました。


頂いた技術的な解説が掲載されたブックレットによると、時計のムーブメントは婦人用?の小さい自動巻きムーブメントが文字盤直下に別に入っており、風防から見える部分はすべてシンギングバード機構のためのムーブメントという構造のようです。
リュウズも独立したものが二つあり、12時位置のリュウズが時計用、2時位置のリュウズがシンギングバード機構用で、リュウズで巻き上げ、同軸のプッシュボタンで起動/停止を行う構造です。
鳥のパワーリザーブはフル巻き上げで45秒程度だそうです。
防水はミニッツリピーター並みの湿気・埃のみ対応(ケース横に音を出すためのメッシュがあるので、水は入りたい放題)で、サイズも48mmと腕に付けるには大きいのです。


このサイズに機構をすべて納めて、大きな音量を出せたのは素晴らしい事だと思います。

Frères Rochat Singing Bird

Christophe Claretをはじめとして、"変わった時計"が得意な代理店のNoble Stylingさんが今年から扱い始めたブランドです。
今年で3回目になるPALACEというイベントに合わせて初来日しました。
曰く、一生に一度見られるか?とのレベルで、PALACE自体は今月末まで行うものの、Frères Rochatや一部の製品は6/9のレセプション後には飛び立ってしまうとのことだったので、駆けつけました。
こちらは簡易化していない昔ながらのシンギングバードのムーブメントを現在の技術を持って復刻および進化させ、それに贅を凝らした一品製作(ユニークピース)の外装を与える、というとんでもなく贅沢なものです。



鎮座する鳥様。
シンギングバードは通常鳥が出ている状態で停止させることは出来ないのですが、Frères Rochatのムーブメントは背面から専用の操作穴に巻き上げ用のカギを差し込んで操作することで鳥を出すことができます。
また、鳥が出ている状態では起動できないように安全装置が働き、起動レバーを空振りさせ、同様に起動中にレバーを操作しても空振りさせ、機械の破損を防ぐ機構をも備えています。
これらの関連技術でいくつか特許を取っているとのことでした。



透明の天板(ミネラルガラス)を通してレバーと重なったカム、鎖引き(チェーンフュゼ)によるトルク安定化香箱などが見えます。
速度安定化用のガバナなどのレギュレータなどはなく、ふいごやの抵抗と鎖引きのみで速度安定化ができるとのことでにわかには信じられません。



動画を撮りまくる。


鳥は起き上がって、鳴き声パターン2種類をさえずった後、モーツァルト交響曲第40番を奏でて帰っていくようです。
音階としては半音12音分(1オクターブ)出すことができ、音楽の部分はカスタマイズすることも可能だとか。
もはや凄すぎて、Amazingとしか言えませんでした(語彙不足)。



こちらはホワイトゴールドでフルエングレーブ、ダイヤとエナメルの桜の花で飾ったモデルです。
機械が見えないですが、全体のデザインはこっちの方が好きです。


所用を済ませ、レセプション前に早めに言ったところ、CEOの方とプアイングリッシュでコミュニケーションを行う機会を得て、手袋越しではありますがカギによる巻き上げや起動レバーを引くという体験をすることができ、良い思い出になりました。


ムーブメントの構造については、公式の動画がありました。
Frères Rochat Technical Presentation Movie on Vimeo


Jaquet DorzとFrères Rochatは無関係ではなく、片方のいうことを信じるともう片方が…みたいな感じで色々アレなので、引き続き調べたいと思います。


別の日のイベントで、見かけたManufacture RoyaleというブランドのOperaミニッツリピーター。
音を響かせるためにアコーディオン式にケースが伸びるというコンプリケーション。